徒然なる徒然

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【2021年版】ノンフィクション好きが選ぶおすすめノンフィクション書籍10選

「事実は小説より奇なり」

 と聞いたことがある人は多々いらっしゃることでしょう。

私も読書をするようになってノンフィクションのすばらしさを知ることができました。

映画にも本当にあった話的な内容のものはありますが、本の世界にもあります。

そこで私が好きなノンフィクション10作品を選出しましたのでご紹介します!!

 

 

「深夜特急」(沢木耕太郎)

 まずノンフィクションといって外せないのはこの作品です。

このページに来る人であればもう知っているという人も多いかもしれませんね。

沢木耕太郎さんが実際に香港からロンドンまで、ほとんど路線バスで辿り着くという、普通では考えられない体験をしています。

現在ではスマホとSIMさえあればできそうな気がしますが、この本が出版されたのは1980年代です。そのためスマホどころか、インターネットすらほとんどない時代です。そんな中、沢木耕太郎さんは最低限のにもつを持って、勘と並外れたコミュニケーション力を武器に進路を切り開いていきます。

現在のバックパッカー文化を生んだ第一人者の熱いノンフィクションです!!

 

「何でも見てやろう」(小田実)

さて、こちらは更にさかのぼり、1960年代の話になります。 

フルブライト留学生(米国との交換留学)となりアメリカから始まり欧州・アジアの22か国を探訪します。各国のでの小田実さんが感じたこと、現地の人とのやり取り(英語が最初は話せないのは鉄板)、日本との違い、社会の様子、裏側など様々な視点で描かれています。

ちなみ当時の生活日は一日1ドルだそうです。現在でいうところの千円くらいの価値で生活していたそうです。今だと泊まることすらも難しいですね(笑)

 

「裸足で逃げる」(上間陽子)

 こちらは少し系統が変わり、社会派ノンフィクションです。

上間陽子さんは教育学者として東京・沖縄で未成年(家庭内や何らかの問題を抱えている人など)の調査・支援を行っている方です。

「裸足で逃げる」では沖縄の主に家庭内DVや10代で結婚した人たちの実情を描いています。作中では作者の主観などは極力入っておらず、実際の事実に即した記録として書いている分、「本当のこんなことがあるのか」という気分になります。

田舎のコミュニティがある分なかなか抜け出せない人たちなど、沖縄は勿論、他の地方の人でも同じような境遇にある人が多いのかも。

 

「80's エイティーズ ある80年代の物語」(橘玲)

 まずこちはら装丁がとてもかっこいい。鈴木誠一デザイン事務所による装丁だそう。

タイトルの通り、80年代(正確には70年後半から90年半ばくらいまで)の、橘玲が編集者になるまで、活躍していた時代などについて書かれた本です。

当時どういうものが世間的に流行っていたか(ポストモダン哲学、アントニオ猪木、宝くじ、バブル…などたくさん)というのを知ることができます。

昔はよかったというのはあまり好きではないですが、当時を生きたかったと思わせてくれる本です。私自身が20代ですが、20代だからこそ新鮮で重しいと感じることができました。もちろん、上の世代でも懐かしく思いながら読めると思います!

「謎の独立国家ソマリランド」(高野秀行)

 クレイジージャーニーにも出演していた高野秀行さんによるソマリランドを解明する本です。高野秀行さんは基本的に誰も行ったことがない、やったことがないことをすることが好きな人で、ミャンマーにアヘン栽培をしに行ってアヘン中毒になったりする大変忙しい方です。

「謎の独立国家ソマリランド」では、(ソマリランド…知らないよね?)ソマリランドという未承認国家がソマリアの中にあるらしい。そして、紛争があまりないらしい。ということで、入国の難関を突破し、カート(草)中毒、便秘、銃撃戦などを乗り越えながら実態を解明しているという破天荒ノンフィクションとなっています。

現地の人と仲良くなっていく過程もとても面白く、本を読んで実際に会いに行っちゃう人もいるらしいですヨ。

 

「空白の5マイル」(角幡唯介)

角幡唯介さんは高野秀行さんと同じく、早稲田大学探検部出身の探検家です。

高野秀行さんとはまた系統が違い、だれも行ったことがないところにアナログで行くことにこだわっている方です。

今現在はスマホの普及などで誰も行ったことがないところはほとんどないため、あえて見つけていきます。北極圏の探検を書いた「極夜行」ではノンフィクション大賞にもえらばれました。

「空白の5マイル」では、チベット奥地にあるツアンポー峡谷を踏査したことを書いた本です。何人、何組もの調査隊が踏査を試みたものの、難関な地形に阻まれ、完全に踏査を終えた人は誰ひとりとしていなかったそう。

まさに山あり谷あり、谷谷谷!!!という過酷な内容で、角幡ワールドに引き込まれます!

 

「殺人犯はそこにいる」(清水潔)

北関東連続幼児誘拐殺人事件を追ったノンフィクション作品です。

文庫Xとして一世を風靡した作品でもあり、わたしはここからノンフィクションにはまりました。

執念の取材・調査で単独事件から連続事件へとつながり、警察の腐敗・冤罪をも証明する衝撃の内容です。正直暗い気分になる話ですが、リアルだからこその感覚だと思います。目を覆うことは簡単ですが、真実に向き合うことがノンフィクションの醍醐味です。

 

「十五の夏」(佐藤優)

 知の巨人といわれる佐藤優さんによるソ連・東欧の一人旅を書いたノンフィクションです。タイトルの通り、15歳の夏休みに両親に送り出され、ソ連・東欧を一人旅します。15歳でこんな一人で海外なんて行けるのか!!とまずそこから驚きです。今では想像もできないくらい佐藤優さんイケメンですよね…

しかも、社会主義国家を見て回るというのが他の旅本とはまた異なる内容です。

現地での食事、ペンフレンドと対面など登場する人たちも素敵で厚い本ですがすらすらと読めます!

「戦地の図書館」(モリー・グプティル・マニング)

 第二次世界大戦時の図書を題材にしたノンフィクションです。

ナチスドイツのヒトラーはプロパガンダ作戦に打って出たことは有名ですが、発禁・焚書によって一億冊以上を処分したそうです。

対してアメリカは図書を武器に、兵士を勇気づけます。戦場で持ち運びできるようにペーパーバックにして兵士へ支給し、戦地で交流するたびに交換していったりと図書の必要性を感じることができる1冊です。

 

「ルポ川崎」(磯部涼)

川崎中一殺害事件を皮切りに、神奈川県川崎市のリアルを書いているノンフィクション作品です。
川崎といえば、武蔵小杉などきれいで高所得というイメージもありますが、もともとは労働者の町として栄え、また港町ということもあり多人種の町でもあるそうです。
そんな川崎でのコミュニティーやアイデンティティの問題などを書いています。
BAD HOPのメンバーへの取材もあるので、若い世代でも親しみやすい本です!!