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【あらすじ・書評】町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』 誰しもひとりぼっちではない

 

2021年本屋大賞を獲得した、『52ヘルツのクジラたち』が今現在40万部を突破しているそうです。

もともと書店界隈では発売当初からかなり期待をされていて、選ばれて良かったという感じですね。

 

そんな『52ヘルツのクジラたち』について書評を簡単に書いていこうと思います。

 

52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

 

 

 

『52ヘルツのクジラたち』あらすじ

 

主人公の貴瑚は毒親に育てられ、厄介者扱いされ、自分の人生を搾取されてきた。

「ムシ」と呼ばれる少年は母親からDVを受けて育っていた。

貴瑚を救い出した安吾さんはトランスジェンダーで自分自身に悩みを抱えて生きていた。

誰にも届かなかった助けを求める声が、それぞれの出会いで自分の声を聴いてくれる人に出会う。

海辺で見たクジラも仲間に出合えたのだろうか?

 

52ヘルツのクジラとは、1980年頃に観測された一匹だけ異なる周波数で鳴くクジラの個体ことを言います。クジラは種類にもよりますが、大体10~40ヘルツくらいで鳴くそうです。しかし、このクジラは52ヘルツで鳴くため、周りのクジラと会話をすることができません。そのため「世界でもっとも孤独な鯨」といわれています。

 

『52ヘルツのクジラたち』書評

 

この『52ヘルツのクジラたち』では、登場人物たちがDVやジェンダー問題などで悩んでいます。現実社会でも同じように悩んでいる人もいると思いますし、そこまでいかずとも今の大学生は一人暮らしだとリモート授業で一日誰とも話さないなんてこともざらだと思います。

自由主義が広がる現在の社会において、昔のように近所の人とのコミュニケーションがなくなってきている分、助けを求める声も上げずらくなっている現状があります。

芸能界でも誹謗中傷で自ら命を絶ったりというので結構続いたりしましたが、自ら命を絶つ前に、何でもいいので声を発してほしいなと思いました。

物語では周りのクジラには聞こえない52ヘルツのクジラの声も貴瑚と愛(ムシと呼ばれていた少年)には聞こえた気がするとなっていたので、現実社会でもきっと声を拾ってくれる人がいると願いたいものです。

 

ちなみに、前年の『流浪の月』も同じくマイノリティや共感、救いなどをテーマ?に書いていて、作風としては『52ヘルツのクジラたち』と通ずるところがあります。

出版の最近の文芸界として潮流の先駆け的存在ともいえる作品です。

 

ぜひこちらも読んでみてくだされ!!

 

流浪の月

流浪の月

  • 作者:凪良 ゆう
  • 発売日: 2019/08/29
  • メディア: Kindle版