【あらすじ・書評】磯部涼『令和元年のテロリズム』惨殺な事件はなぜ防げなかったのか
2019年(令和元年)5月1日、平成から「令和」の時代が始まりました。
昭和から平成では天皇崩御後の新元号だったこともあり大きくにぎわうことはなかったそうですが、平成から令和は天皇存命中の譲位。新元号への移行も大きなトピックとして取り上げられました。
しかし、その裏では大きな事件もいくつか発生していました。
今回はその事件について磯部涼さんが書いたルポルタージュ『令和元年のテロリズム』についてあらすじ書評という形で書いていこうと思います。
著者プロフィール 磯部涼
磯部涼(Ryo Isobe)
1978年、千葉県生まれ。90年代末より音楽ライターとして活動を開始。日本のヒップホップ・カルチャー、及びラップ・ミュージックに関するテキストを多数執筆。著書に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版、04年)『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト、11年)、編著書に風営法とクラブの問題についての論考集『踊ってはいけない国、日本』(河出書房新社、12年)『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(同、13年)、歌詞についてのインタヴュー集『新しい音楽とことば』(スペースシャワーネットワーク、14年)、共著書に九龍ジョーと日本のインディ・ミュージックについて語った『遊びつかれた朝に』(Pヴァイン、14年)、大和田俊之、吉田雅史と日米のラップ・ミュージックについて語った『ラップは何を映しているのか』(毎日新聞出版、17年)などがある。
『令和元年のテロリズム』(新潮社)刊行。改元後、立て続けに起こった川崎殺傷事件、元農水次官長男殺害事件、京アニ放火殺傷事件という3つの陰惨な事件の〝現場〟(旧びたニュータウンからインターネットまで)を巡り、日本の現状を描きました。写真は山谷佑介氏 https://t.co/m1iADWRj1C pic.twitter.com/qyM69BVmAt
— 磯部涼 (@isoberyo) March 25, 2021
あらすじ
この書籍では令和元年に大きく報道で取り上げられた、3つの事件を扱っています。
- 川崎殺傷事件(2019年5月28日)
- 元農林水産省事務次官長男殺害事件(2019年6月1日)
- 京都アニメーション放火殺傷事件(2019年7月18日)
本のタイトルにある、テロリズムとは何ぞやということで、Wikipedia先生にお尋ねしたところ次のように書いてありました。
政治的な目的を達成するために暴力および暴力による脅迫を用いることを言う。
川崎殺傷事件は川崎市登戸で起きた無差別殺傷事件で、京都アニメーションも放火によって多数の方の命を奪ったり傷害を負わせているのでテロリズムといって違和感は全くありませんが、元農林水産省事務次官長男殺害事件はなぜでしょうか。
これは日本社会の8050問題(80代くらいの高齢者と50代くらいの子息が引きこもりによって孤立している社会問題)が関係しているのではないかということから、著者の磯部涼さんはテロリズムとして取り上げています。
このように、令和元年に起きた3つの事件がなぜ起きたのかというのを現地に赴き調査しルポルタージュとして書いたのが『令和元年のテロリズム』という本になります。
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書評 令和元年のテロリズムはなぜ起きたのか
この本で取り上げている3つの事件に共通することは、「孤独」ということです。
まず川崎殺傷事件については、犯人が幼少のころに両親が離婚をし、その後は父親も蒸発し、祖父母の家で育てられたそう。祖父他界後は伯父夫妻と3人での生活になりますが、ここでも8050問題があったことが考えられる
元農林水産省事務次官長男殺害事件では、長男が引きこもって家でゲームをしていたというのは有名な話です。実際にこの本でも書いてありますが、エリートの父親に育てられプレッシャーもありアスペルガー症候群になってしまったそうです。
ここでも8050問題が起きたことが考えられます。
京都アニメーション放火殺傷事件はどうかというと、この事件の被疑者は幼いころから複雑な家庭環境で育ち、父、姉が自ら命を絶ち、母からは縁を切られ孤独の生活を送っていたそうです。
それぞれの事件で周りに助けを求めることができない環境で、大きな事件へと発展しまったということは共通点としてあるります。
特に8050問題など昔の日本のように困ったらお互い様というように近所の人と助け合いが薄れてきているという問題が根底にあるようです。
そのほかにもこれらに事件の現地へ赴き調査していて、令和ならではのテロリズムをしることでこれからの社会の在り方について考えることができる本です。
ぜひ皆さん読んでみてください!!