徒然なる徒然

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【要約・書評】『世界は贈与でできている』を読んでこれからの社会の在り方を考える

最近、ニューノーマルな社会や、コロナ後の社会ということが議論されていますね。

僕も結構そんな本を読んだりするわけですが、『人新生の「資本論」』は脱成長やコモン体制による新たな社会制度を提唱したり、『「利他」とは何か』では他社とのかかわり方について様々な論者が語ったりと他者との関りが主なテーマになってきています。

 

そして、今回ご紹介する

『世界は贈与でできているー資本主義の「すきま」を埋める倫理学』

でも「贈与」をテーマに他者との関りについて書いてあります。

 

 

 

 

『世界は贈与でできている』要約

贈与の定義

この本での贈与の定義は「お金で買うことのできないものおよびその移動」としてあります。これを頭の片隅に置いて読み進めてください。

 

人間はなぜ、プレゼントを贈るのか

クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー、誕生日、父の日、母の日、結婚記念日…

パッと上げきることができないくらい様々なタイミングでプレゼントを送っています。

なぜ私たちはこんなにもプレゼントが好きなんでしょう?

A.プレゼントをすることによって、モノが「ものでなくなる」からです。

プレゼントで貰ったものを自分で買ってしまえばただの買い物ですが、プレゼントとして受け取ることによって、同じ商品であっても同じ商品でなくなる唯一性が生まれるのです。

 

生まれた時点で贈与の連鎖は始まっている

我が子には厳しかった母親だが、孫には何でも言うことを聞いて甘やかしてしまう。

そんな事例はよく聞く話ですよね?しかしなぜそうなってしまうのでしょうか?

親に育てられ、時には厳しく、無償の愛をもって育てられる。
誰しもが気づかぬうちに贈与を受け取っているのです。

もちろん両親ではなく他の大人に育てられた人も同じように誰かしらから無償の愛という贈与を受け取って大人になっています

そして、その贈与が完結したと確認できるのは、贈与を受け取った対象の人が、新しい対象者(孫)に贈与を開始することによって贈与を完結できるのです。

そのため、人は生まれながらにして贈与に巻き込まれていると言えるでしょう。

 

贈与と社会福祉の関係性

give&takeで成り立っている社会では、giveするものがなくなってしまっては新しくtakeすることができません。

そういうときこそ人に頼ることが必要になります。贈与を受け取ることです。

人はだれしも交換するものがなくなった時、助け(贈与)を求めます。

しかし、周りとのつながりがなく孤立して生きてきた人は贈与を頼る人がいません。

give&takeだけの社会では助けてと誰かを頼ることができなくなってしまいます。

 

贈与は人知れず行うべし

贈与は見返りを求めないからこそ贈与として成立します。

見返りを求めてしまうと、偽善や交換となってしまいます。

そして、最悪の場合「私は~してあげたのに」と贈与の見返りを求めすぎた場合、贈与ではなく強制された贈与の呪いになるです。

そのため、贈与は気づかれないように行い、後になって「あれは贈与だったのか」と気づいてもらうことが大切です。

 

逸脱的思考によって可視化できる贈与

贈与に気付くためにはどうすれば良いか。

ただ日常をボーっと過ごしていると気づきづらいかもしれません。

日常の中の小さな変化や、そもそもの常識を疑うことで贈与に気付くことができます。

たとえば、朝通勤途中で空き缶が落ちていて、夕方にはなくなっていたなんて経験ありますよね?(あれ、僕だけですか??)

あれも人知れず誰かが回収してくれていて、また自分の周りで起きた時に気付いた人は恐らくいつか自分自身もそうしようと思ってくれるはずです。

日常の小さな変化にも目を配りましょう!

 

書評

令和の子供たちの教科書にはSDGsのことが記載されている比率が以前に比べあがっています。以前はより豊かになる生活=お金を多く稼ぐという感じでしたよね?

しかし、現在は一人の利益を追求するより、エコで持続可能な社会を作っていこうという風になっています。

人との関りというところで、今回の本は「贈与」をテーマにしています。

個人主義で自分さえよければ良い。よりコスパを求める。

そんな社会は終わりに近づき、よりみんなで人知れず贈与合戦を行うという新たな社会が近づいているのかもしれないと思いました。

 

こちらの本もこれからの社会を考えるうえでおすすめの本です。

気になる方はぜひ読んでみてください!僕からの情報という贈与(交換か!)です。

 

 

『人新生の「資本論」

 

人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。いや、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす。

 

 

『「利他」とは何か』 

 

【コロナ時代。他者と共に生きる術とは?】
コロナ禍によって世界が危機に直面するなか、いかに他者と関わるのかが問題になっている。そこで浮上するのが「利他」というキーワードだ。
 しかし道徳的な基準で自己犠牲を強い、合理的・設計的に他者に介入していくことが、果たしてよりよい社会の契機になるのか。