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【あらすじ・書評】『吃音 伝えられないもどかしさ』近藤雄生|吃音は障害なのか

 

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最近読んだ、『吃音 伝えられないもどかしさ』について紹介していきたいと思います。

 

そもそも、吃音ってなんやねん!という人もいるかと思いますので簡単に説明すると、声を発しようとしたり、話をしようとしたときにつっかえたり、続きの言葉を発することができなかったりする病です。

100人に1人の割合で程度の差こそあれ吃音を持っている人がいるらしく、マリリン・モンローなども吃音を患っていたそうです。

 

ということで、『吃音 伝えられないもどかしさ』のあらすじ、書評を書いていきます。

 

 

著者

近藤雄生(Yuki Kondo)

1976年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了。2003年、自身の吃音をきっかけの一つとして、結婚直後に妻とともに日本を発つ。オーストラリア、東南アジア、中国、ユーラシア大陸で、約5年半の間、旅・定住を繰り返しながら月刊誌や週刊誌にルポルタージュなどを寄稿。2008年に帰国、以来京都市在住。著書に『放牧夫婦』『中国でお尻を手術。遊牧夫婦、アジアを行く』『終わりなき旅の終わり さらば、遊牧夫婦』(以上、ミシマ社)、『遊牧夫婦 はじまりの日々』(角川文庫)、『旅に出よう』(岩波ジュニア新書)、『オオカミと野生のイヌ』(エクスナレッジ、本文執筆)。大谷大学/京都造形大芸術大学 非常勤講師、理系ライター集団「チーム・パスカル」メンバー。
ウェブサイト http://htts://www.yukikondo.jp/

出典:『吃音 伝えられないもどかしさ』著者紹介より

 

あらすじ

著者自身が吃音を患っていて、夫婦で海外放浪の旅に出たりと繰り返していて、主にルポルタージュの寄稿を行っていました。

帰国後に吃音について取材を行っていると、NHKバラエティー番組「バリバラ」で吃音を患っている人たちが出演するということで取材に同席し、高橋啓太さんという吃音を患っている人に出会いました。高橋さんはそれまで家族にも吃音について話したことがなかったそうですが、番組で吃音が原因で自殺しようとしたことがある過去について話したそうです。それから著者の取材がはじまりました。主に高橋さんが吃音によってこれまでの生活、働くうえでの苦労、家族の問題、周囲との関係性などについてが書かれています。そのほかにも数名事例が出てきたり、おそらく吃音が原因で職場での不当な扱いによって自殺してしまったと思われる方の話などが出てきます。

吃音の著者による、吃音の実態を記したルポルタージュになります。

 

書評

100人に1人は吃音を患っている社会

女優のマリリン・モンローや、歌手のエド・シーラン、とくだねキャスターの小倉さんなども吃音を患っているとされています。

あまり表立って見えていませんが、それぞれが吃音と向き合ってあまり出ないようにはなっているようですが、実際はかなりの苦労があるだろうと思われます。

自分の周囲の人で吃音を患っている人に出会うことは多くないようですが、実際はそれぞれが吃音と向き合いながら表面化していないだけなのかもしれません。

重度な吃音もあれば軽度な吃音もあるため、症状が分かりにくいため話し方が少し変だなと思うだけで済ませてしまうこともあるかと思います。

 

吃音と医療

吃音を患っている人たちは伝えられないもどかしさに苦しんでいます。

何とかして直そうとしている人たちはやはり医療を頼りにするわけですが、吃音の治療法として完全にこれが正しいというのはないそうです。それぞれが自己流で克服していたり、吃音を治すのではなく、表面化しないために努力しているというのが実態です。

しかし、吃音が治るといって煽り、ビジネス化している現場もあるそうで、何十万かけて結局何も改善されなかったりすることもあるようです。しかし中には真摯に吃音を治そうとしている医療もあるため、当書籍で登場する高橋さんも重度の吃音を患っていますが医療のサポートもあり当初かなりどもっていたのが改善され、スムーズにとまではいかずとも人前で話をできるようにはなったそうです。

 

吃音は障害なのか

吃音は正式に障害と認定されるには医師によって生活に支障をきたすと診断を受ける必要があり、ハードルが高いそうです。軽度の吃音を持っている人たちはそこまではいかず、周囲の人たちからはなんか話し方変だよねという目で見られがちです。

みんなが障害認定を受けようと思っているわけではないと思いますが、社会として吃音の理解が乏しいがゆえに不当な対応をしてしまったりと吃音を患っている人たちん心理的負担をさせてしまうことが多々あるのではないでしょうか。

 

周囲のサポートや理解

吃音を患っていると電話とっさに言葉を発することが困難な場面があるので、職場での会議や電話対応などが苦手で社会生活を送るうえでハンディを抱えています。

書籍に出てくる高橋さんの場合は転職し、そこでは電話対応はしなくても良いとか、チャットでやり取りして良いとかいうサポートを受けることができ、心理的負担をあまり感じずに働くことができるようになったそうです。

あまり多くの会社でこのような理解があるとは思えませんが、様々なマイノリティを抱えている現代社会において吃音も同じように周囲がサポートしていければ吃音が原因で自殺をしたり、悩みを抱えていかなくても良い社会になっていくのではないでしょうか。

 

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